Chapter20「訴訟」
しばらくすると、弁護士のお兄さんが家にやってきた。
お兄さんは旦那さんと兄弟というだけあって、背が高くがっちりとしている。
インド人は日本人より体格の劣った人もたくさんいるのだが、欧米人並に体格のいい人もやはりいる。僕はそれは単に栄養の差なのだと思っている。
たぶん町で見かける小柄なインド人も栄養状態が良ければ立派な体格になる遺伝子は持っているのだろう。
弁護士のお兄さんにもすでに話は伝わっているらしく、彼は「許せない」と言い、やさしい笑顔で僕らを安心させようとしてくれた。
弁護士は「訴訟するかもしれない」という可能性を口にした。
訴訟。
僕には一生縁のない言葉だと思っていた。
しかし、僕らはすでに「もうこの問題に不平不満を言わない」という同意書を書いてサインしてしまっている。
「サインをしている以上、訴訟しても勝ち目はないんじゃないですか?」
田中君が聞くと旦那さんは、
「インドではこんな契約書は意味ない。脅せばすぐ謝る」
と僕らの不安を一蹴しようとした。
僕は「そんなもんなのかな」と思いつつも、少しおかしいなと思い始めた。
「あまり彼らを追い詰めると自分らの身も危険なので、もうあまりこの問題に首をつっこみたくないんです」
僕は訴えた。
僕だけでなく田中君も、これ以上深入りするとデリーで暗殺 されるんじゃないかと本気で思っていた。
しかし、旦那さんに僕らの恐怖は伝わらなかったらしく、
「なんも問題ない。堂々とデリーを歩いて大丈夫だ。明日あのリキシャマンに会っても無視すればいい。怖がることはない」
僕らにとっていささかショックだったのは、旦那さんの仕事が旅行代理店の経営者だということを知った時だ。
インドでの体験で旅行代理店に変な先入観を持ってしまった僕たちにとって、また旅行代理店の人に助けてもらっているのか・・・という不安がどうしても首をもたげてくる。
弁護士はDelightに電話をかけた。
長い電話が終わり、僕らは何を話していたのか尋ねた。
弁護士によると、電話には向こうの社長(サルダンさんのこと)が出て、問いつめると答えにつまっていたらしい。
CTT(にせ政府観光局のこと)の電話番号を聞くと、「ちょっと待ってください」と言ってオフィス中を探しているフリをして時間を稼いでいたらしいが、結局CTTの住所と電話番号を教えてきて、
「うちはCTTとは関係ありません」と言ったということだ。
あまり事態が飲みこめていない僕らに、旦那さんが
「明日、うちの運転手をよこすから1日デリー観光でもしなさい」
と提案してきた。
しばらくすると運転手が家にきて紹介される。
車のナンバーを教えてもらって明日メイン・バザールの駐車場で13時に待ち合わせることになった。
そのあと、カレンダーをみながら今後の旅の日程を練る。
旦那さんのアドバイスで、まず一番距離的に遠いブッダガヤに最初に行き、その後ヴァラナシ、アグラとUターンする形でデリーまで戻ろうということになった。
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