Chapter15「自称マフィア男」
にせ警官から逃げ出してきた僕らは、バグワンダスと待ちあわせをしていたPブロックのマクドナルドを探した。
通りを歩いていると、僕らを待っていてくれたのか、バグワンダスがリキシャーに乗って現れた。
「遅かったので心配した。金は取り戻せたのか?」
僕らはお金はまったく取り戻せず、しかも航空券までとられたという惨敗報告をした。
バグワンダスははじめ苦い顔をして聞いていたが、僕らを励ますために明るい表情を作り、「なんとかするから心配するな」と言ってくれた。
僕らはDelightに戻った。
セカンドマネージャーに交渉が惨敗に終わったことを報告すると、
「あれほど航空券をとられるなと言ったのに」
と嘆かれた。
はっきり言って、インドに来たばかりの僕らにやつらと互角にやり合うことを要求するのは無理がある。誰が交渉中に警官(にせもの)が事務所に乗り込んでくると思うだろうか。
交渉の様子をうまく英語で説明することができずとまどっていると、
「日本人スタッフを連れてくるから」
と言ってセカンドマネージャーは中座した。
彼らにすべてを話せと言うことらしい。
日本人スタッフの人がそれをDelightの人に説明してくれるのだろう。
チャイをごちそうになりながら待っていると、30分ほどして20代前半のがらの悪い日本人カップルが入ってきた。
「あら、日本人がいるよ」
そう言った男の方は石井一久をもう少しほっそりさせた感じで無精ひげをたくわえ、長髪を後ろで束ねている。
女はパンク系の格好をしている上、薄い眉毛に目つきが悪いのでちょっと怖い。
男の身長は180cmくらいだろうか。
どうかしたの?と男のほうが聞いてきたので、僕らは事情を説明しようとした。が、僕も田中君も話しているうちにだんだん感情が高ぶってきて、うまく伝えることができない。
「おまえら話が支離滅裂だから落ち着け」
僕らの話を聞くかわりに、その男は自分の話をし始めた。
男によると、自分は日本のマフィアでこの女は彼が所属しているマフィアのトップの娘だという。
「日本のマフィア?」
なんだか最近マフィアとよく知り合いになるが、そんなにマフィアってたくさんいるものなんだろうか?
彼らはインドは初めてで、英語もまったく話せないらしい。
「え?だとしたらどうやって僕らの説明を通訳するんですか?」
とはとても聞ける感じではない。
彼はサルダンさんとの出会いについても話しはじめた。
ついこないだも騙されてカシミール地方に連れていかれ、命からがら逃げ出して日本大使館前で下着姿で泣いていた日本人女性をDelightが助けたということがあったらしい。
その日本人女性は足が腫れていたので、サルダンさんはその女性のために施設のととのった私立のいい病院で治療してあげたところ、非常に感謝された。その女性はその後インド旅行を楽しんでいたが、しばらくすると「Delightに騙されたから訴訟を起こす」と電話をかけてきたらしい。
要するに、アグラに滞在している時にあるインド人にそそのかされ、その女性は自分が治療費をぼったくられたと思い込んでしまったということのようだ。
自称マフィア男は、その話を昨日サルダンさんから聞いたばかりだ、と言った。
「おまえら、昨日までサルダンはもう日本人は助けないと言ってたのにもう今日おまえらを助けてるんだから、こんないい人を裏切ることは絶対するなよ。おまえらラッキーだよ」
とその男は言った。
「へぇ〜、そんなこともあるんですね。そんな恩知らずな女がいるんですねぇ」
田中君も僕もまさかこの時は、翌日にその女性とまったく同じことをすることになるとは、米の粒ほどにも思ってはいなかった。
また、彼らがいつインドに来たのかを聞いたところ、驚いたことに 僕らと同じ便(JAL471便)で来ていたことがわかった。
僕はまったく記憶になかったが、田中君は確かにこの二人を機内で見た覚えがあるという。
自称マフィア男にパスポートを見せてもらったが、これは偽名らしい。もちろん、その時彼のフルネームを記憶しメモに残しているが、ここでは書かないことにする。
僕らは彼を「堀さん」と呼ぶことにした。
スポンサー広告
感想大募集!!
『裏インド旅行記』いかがでしたか?
これからインドに行く人、もうインドはこりごり
だという人、是非あなたのご感想をお寄せください!
また、インド旅行初心者の役に立つ、
様々なインド体験談も募集しております。
